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チームマイナス6

 

ねむれな〜い       野原 悠 (絵:作)

「あ〜あ、目がさえちゃった〜」

柚子は、目をパチパチさせながら、ほとんど暗闇の中で、天井や壁のポスターを貼ってある

あたりを見まわしました。

「あ〜あ、明日は中学に入って初めての実力テストか〜。こんなに寝ないと

テストの時間にねむくなっちゃう、どうしよう」

ドキドキして暗記したことも全部忘れそうです。

「あ〜ダメダメ、ますますねむれな〜〜い」

家族に気づかれないように、ソロソロと窓のカーテンを開けて外を見ました。

夜空は、星が少しでているだけで、近所の家も黒く静まり返っています。

街灯も夜中は、明かりをおとしぼんやりしています。

「みんなは、こんな時どうしているのかな〜?私って情けない・・かも」

フ〜っと長〜いタメ息をつきました。

「ウフッ」その時かわいい笑い声を聞いたような気がしました。

「えっ、うそ〜。へんな声まで聞こえてきた〜。私どうかしちゃったのかな?

テストなんてなければいいってずうっと思っていたし・・ノイローゼかな?」

まどわくに腕をのせてボンヤリ外を見ていてフ〜っと、ガラスにおでこをつけてみました

。「う〜ん、つめたすぎ。ますます目がさえちゃった〜」

ブツブツとつぶやきました。

「ねむれないの?」さっきの声が言いました。

「うん・」

と答えてからびっくりしてキョロキョロ。

「取りに行ってこようか?」

「どこへ?なにを取に行くの?だれ?」

たてつづけに聞きながら

『夢のなかかなぁ、夢だったらこのまま眠れればいいなぁ〜、早く寝なくちゃいけないし』

そう思いつつも柚子は、耳をすましていました。し〜んとして、なにも聞こえません。

『なんだかばかみたい、気のせいだったのかな?』もう一度耳をそばだててみた時

「わたしね、小さい虫なの。こわい?」

「虫?ぜんぜんこわくないけど、きらいきらい、大嫌い!」

「どうして?」

「だって、気持ち悪いし刺されると痛かったり、かゆかったりするでしょ?」

「ウフッ・やっぱり私たち虫はきらわれものね」

小さな虫は、窓ガラスに止まって姿をみせました。ぼんやりした街灯の灯りに虫の姿がうかびます。

淡いグレー色のどこにでもいそうな普通の虫です。

「わ〜いや、あっちに行ってよ」

柚子は、暗記のために置いてあったノートをふりまわして、虫を風でとばそうとしました。

虫は、とばされないように必死でガラスにはりついています。

小さな羽を思いきりちじめて、吹き飛ばされそうになりながら言いました。

「私たち種族はさしたりしないの。ただの≪はこびや≫なの」

柚子は、虫をたたき落とそうとして、ノートを振り上げながら言いました。

「≪運び屋≫?マヤクとか?」

ちょっと意地わるく言ったのですが、虫は意外と真剣な声で

「そういえるかも」

ちょっと面くらって振り上げた手をおろしました。

虫は五ミリぐらいの大きさで、うすい羽をこきざみに動かしてふるえていつように見えます。

目がどこにあるのかわからないぐらい小さな顔です。

この夜中に得体のしれない気持ち悪い虫と話をしているなんて・・現実?

『もう、やだ〜私はどうなっているの?』

柚子は、大変なことに巻き込まれたと思い、アワテテそわそわします。

「あのね、お空の窓に取りに行くの」可愛い声でいいます。

「空は、ずうとつながっていて、窓なんてどこにあるの?」

ちょっと怒って柚子は、かなりイライラしながら言いました。

「お空には、たくさんの窓があってね、窓をあけると小さなお部屋になっているの。

かべも天井も床もみんなお空でできているの」

「じゃあ、ないのと同じじゃないの」

 ますます怪しい・・

『なにを言ってるのよ、この変な虫は』

早くこの夢から覚めなければ、明日のテストは0点です。

「窓のお部屋は、とっても明るくて大きな青空とつながっているの」

「だから部屋なんかないのと同じなんでしょ!」

柚子は、腹立たしく言い返しました。

「ううん、いっぱい入っているの。やさしい心や温かい心。私たちは人や動物、植物たちの嬉しい時や楽しい時の心を少しあづかって、お空の窓に運んでおくの。そしてね、

人や動物や草花や木が、淋しい時や悲しいときに窓から温かい気持ちの心をはこんでかけてあげるの」

『ヤダ!こんな話の展開になるなんて・・どうしよう。まるで私ったらイジワルバーさん・・』

柚子は、自分がはずかしくなり、気をつかって小さな声でそおっと言いました。

「あの〜、シャワーのようにかけるの?」

「そう、ふんわりシャワーのように。気持ちがラクになってねむれるの」

小さな虫は、うれしそうに続けて言いました。

「心配や悲しいこと、つらい事があると誰でもねむれなくなるの。大人やお年寄りになると、どんどんそんなことが増えてつらくなる。眠れないと怖い顔になって怒りっぽくなるの」

「そうかぁ、眠れないと次の日は、ボーっとしているし、いじわるとか言ってケンカなんかしてるかも・・

私、ねむりたいの・・」

 

柚子は、フワッとあたたかい空気につつまれ、そのままスヤスヤと眠りました。

 

「あ〜朝だ〜。気持ちいい!あっ〜そうだ、テストだ、テストがんばろう」

朝ごはんを食べ、学校へ行く途中

「なんかいいことあったような気がするけど、なんだっけ?あっ思い出した。

眠れないと怖いいじわるバーさんになる・・虫さん、ありがとう。ぐっすり眠れました。

虫は嫌いなんて言ってごめんね。虫さんは、なんにも悪くないのに、あんなにやさしいのに

気持ち悪いなんて言って、ほんとにごめんなさい。」

空に向かって、虫に聞いてほしいと願いながら、小さな声で言いました。

 

向こうから手をふりながら走ってきた友達に

「よく眠れた?」

「ぜんぜん、緊張して眠れなかった。テストだめそう・・」

「いいこと教えてあげる。ねむりたいって願うとふんわり温かくなって、ぐっすり眠れるようになるのよ」

「ヤダ、もちろん、眠りたい、眠れないと大変だって思ったわよ」

「助っ人!助っ人をよぶの。小さな虫よ」

「なに訳の分からないこと言っているの?柚ちゃんも寝不足でおかしいんじゃない?」

 

友達の声は、聞こえたけど、片足を軸にくるりとまわって

『あの空には、人には見えないけれど、温かい気持ちのつまった窓がいっぱいある!うれしいなぁ。話しても信じてくれないよね。でも、言いたいなぁ あのこたちが、いるってことを』

柚子は、そんなことを思いながら、ウフッと笑い元気に友達と歩き出しました。

 

もうひとつウフッと小さな声がしましたが、柚子は気づきませんでした。

 

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